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◇垂見峠(たるみとうげ)

ある夏の暑い日、若者が不思議な人物に呼び止められ、樽と手紙を芦屋の廻船問屋まで届けてくれるよう頼まれます。この暑さにもかかわらず蓑(雨具)をまとい、笠をかぶった異様な風采です。しかし、お礼に目の眩んだ若者は怪しみながら引き受けました。

峠で一休みしていると、ムラムラと手紙の内容が知りたくてたまらなくなりました。さんざん悩んだすえに、ついに封を開けて手紙を広げてみると「この尻をもって千尻なり」という謎のような言葉が書いてありました。

若者はこの意味を確かめるため思いきって樽をのぞきこみました。すると中には人間の尻がいっぱい詰めてあるのです。しかも、それが、九百九十九もあり、この若者の尻を加えると、ちょうど千になる勘定でした。若者はやっと、手紙の意味がわかり、背筋の凍る思いをしました。
これはじつは河童の仕業だったのです。このことがあってからこの峠を樽見峠と言うようになり、そして今は垂見峠と書くようになったそうです。

出典:『宗像の浪漫街道』
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